ゆうがおについて

ゆうがおの実を薄くむいて干すとかんぴょうになります

「ゆうがおの実」は産地では「ふくべ」と呼ばれています

かんぴょうが色々な調理に使えると知ったけれど、地元ではかんぴょう巻きや味噌汁などで食べるくらい。特産品にもかかわらずそれ以外の食べ方が普及していないことが不思議でした。飲食店の方にお話を聞いたり、食のプロデュースをされている方とお話しする機会がありましたが多くの人が「かんぴょう=お寿司」が定着していました。洋食屋さんに「それ以外の食べ方が必要でしょうか」と言われたこともあります。


食のプロの方にかんぴょう巻き以外の調理に興味を持ってもらえず、かんぴょうの食べ方をどうやって知ってもらおうか悩みました。そうやってかんぴょうの食べ方の普及活動をする中、かんぴょうを初めて知る物珍しさもあり、社内だけでなく農家さんにもたくさんお話を聞いて回りました。


農家さんから聞く話はみな「朝が早く、重労働」という苦労話ばかり。かんぴょうの原料のユウガオの実は7~8キロあり、真夏の暑さの中の収穫は重労働。しかも水分が多いユウガオの実は収穫後早く加工しないと質のいいかんぴょうにはなりません。その為最盛期、農家さんでは夜中の2時からかんぴょう剥きをする事も。

またかんぴょうは剥いて干すだけ、と思いきや思った以上に人の手を介することが多く、ほとんどが手作業。そんな環境の中かんぴょうを作るには剥く人、干す人2人1セットで作業するので、ご夫婦で作業をしている農家さんはどちらかが体調を崩された時点で後継者に譲ることなくかんぴょうを作ることをやめてしまうそうです。

かんぴょう農家の後継者問題と高齢化

こうした重労働による後継者不足や生産者の高齢化によりかんぴょう農家は減少傾向となり、かんぴょう生産量も激減。全国生産量日本一のかんぴょうなのに、このままでは栃木のかんぴょう(=国産かんぴょう)そのものがなくなってしまう!そう思った県内のかんぴょう問屋たちの一部が立ち上がり、自社でのかんぴょうの生産を始めるようになりました。篠原商店でもその中の1社です。

そうやって頑張っていますが2020年の作付面積は1978年から約95%も減少しているのが現実です(日本食糧新聞2020.12.16 12160号)

生産もするようになるとかんぴょう農家の大変さを痛感するようになりましたが、ユウガオの実を自由に扱えるようにもなりました。農家が減少する原因の一端であるかんぴょうを作る作業がなくてもユウガオの実を野菜としてそのまま食べることができたなら、生産する農家が増えるのでは。

そんな思いからユウガオの実をあれこれ調理してみました。

まずは農家さんがよく食べていたというユウガオの煮物。味が染み、ユウガオをとろとろに煮込んだもの。カブの煮物に似た食感でしたが後味にユウガオ独特の苦みやえぐみを感じることがあり、また作りたいと思うものではありませんでした。

ゆうがおをもっと手軽にもっとおいしく

自分で試作を繰り返しつつ飲食店での聞き込みも続けました。農家の立場で話をするようになると、乾物のかんぴょうよりも夏だけ収穫できる地元食材のユウガオの実に興味を持ってもらえることも増えました。そんなお店にユウガオの実を提供し、メニューを考えてもらったこともあります。この苦みがゴーヤのようでいい!とメニューに載せてくれたお店もありました。

そんな中、あるお店で提供されたユウガオは私が苦手な苦みは残っていましたが、初めて食べる食感にビックリ。アロエに似てはいるけど、アロエとも違う。ユウガオ独特の食感。お店の方も調理のしかたでこんな食感になるのだと驚いていました。

ユウガオ独特の食感に出会い、この食感を活かした何かを作りたい!そう思った瞬間でした。

真夏の太陽で育ったふくべを手軽にご家庭でも

それからは食感を活かしつつ甘いもの、しょっぱいもの、おかずになるもの色々試してみました。試作をしたものは我が家の食卓にあがりました。試作品が何度か続くと「またゆうがお?」と嫌そうな顔をされることも。


家族の不評のネックはやはりユウガオ独特の苦み。好きな人は気にせず食べられるようでしたが、小さかった子供たちはおいしくないと全く手を付けない。そんな子供達がおいしく食べてもらえるものがゴールだと試行錯誤を続けました。

以前「かんぴょうはかんぴょう巻き以外の食べ方が必要か」そう言われたことが頭に残っていたこともあり、ユウガオの実は甘しょっぱい味付けから離れたもの、できたら子供も好きなスイーツにならないかと試作を進めました。


ある日ユウガオの実を甘く煮つけ、レモンなどで味付けしたものをケーキにして出したところ、子供達はあっという間に食べてしまいました。そしてしばらくすると「また作って」と言ってくれたのです。

ユウガオらしい食感、かんぴょう巻きの固定概念から離れ、子供も食べられる味。ゆうがおのシロップ漬けの誕生です。