商品への想い
知られていない地域の日本一をもっと身近なものに
私は生まれも育ちも栃木県ですが、両親は転勤で栃木にやってきた人たちです。
なので栃木に古くからあるものにそれほど接する機会もなく育ち、成人してからは県外で仕事をするようになっていました。
そんな私が縁あって結婚したのが、栃木の特産品である「かんぴょう」の産地問屋の3代目でした。
当時かんぴょうについて知っている事は「かんぴょう巻き」と学生の頃教科書に載っていた「栃木の特産品」という事だけ。しかし聞けばただの特産品ではなく、国内の生産量の9割を占めるのが栃木県産のかんぴょうだという事。
そんなかんぴょう問屋の食卓は日々かんぴょう料理にあふれていました。料理の味を邪魔しないので和洋中とジャンルに縛られず使え、食感をプラスできるかんぴょう。お寿司しか知らなかった私にはとても新鮮でした。
聞けばかんぴょうは食物繊維も豊富で、日々の食生活で不足しがちなカルシウムなども含まれた優秀食材だという事も知りました。
また夏になると会社周辺に広がるかんぴょう畑では、夜になるとゆうがおの花が咲き始め、暗闇の中白く浮かぶ花はとても幻想的で、地域の人たちは当たり前の風景でしたが、栃木県にあまりなじみがなかった私はとても感動しました。
日常に溶け込みすぎた日本一
かんぴょう生産地の人たちにかんぴょうが栃木が全国生産量日本一だという事にもっと誇りをもってほしい。かんぴょう畑の広がる風景の美しさが特別であることを再認識してもらいたい。同時に日々の食事でおいしく健康なものをと思っている人たちには現代人が不足しがちな栄養素を持っていて、日々の食卓に使えるかんぴょうの食べ方はお寿司だけじゃないことをPRすることはできないか。前職で通販のチラシを作っていたこともあり、広報活動を始めました。
広報活動を通じて感じたのが
● 地元の人は当たり前に食卓にあるので「日本一の生産量」にもあまり特別感を持っていない。
● 地元では「生産の大変さ」などマイナスのイメージが大きい。
という事。
そして利用が広がらないのは
● かんぴょうは「かんぴょう巻き」のイメージが定着し、作るのに「手間」がかかるもので敬遠されている。
● 自分が一人暮らしをしていた時に「乾物」は使わなかった。なぜなら面倒だから。
「乾物=面倒」おそらくこれが一般的なかんぴょうに対するイメージです。
生産の大変さは「かんぴょう」にするから。若い世代が使わないのは「乾物」だから。
まずは生産者と購入者のマイナスイメージを払拭しようと、かんぴょうになる前の実をふたを開けたらすぐに食べられるユウガオの実を使った商品を開発しようと試みました。
生の実を使って分かった事は
● ゆうがおの実は干すと甘味がますけどそのままではえぐみが強い。
● かんぴょうは干して食べる事が主流だったので、栄養素は干したものしか調べられていない(ユウガオの実の栄養は未知)
もっと手軽に、もっとおいしく
どうして実ではなくかんぴょうだけが流通したのか痛感する、試作を進めるたびに現れる壁。
ユウガオの実を商品化するにはおいしい商品でなければ次に手に取ってもらえない。
その基本を忘れずに、えぐみを取る方法を探し、おいしいと思ってもらえる味を試行錯誤を数年続けました。
そうして分かってきたのは
● えぐみを取り除けば様々な味に加工できる
● 食物繊維のおかげでスポンジのように味を吸収する
● 食物繊維のおかげで独特な食感がある
という事。
味は忖度なく好き嫌いを言ってくれる子供達に試食してもらい、子供たちが一番「おいしい」「また作って」と言った味を商品化したのが「ゆうがおのシロップ漬け」
リンゴのような味付け・ナタデココのような食感
パッケージにはかんぴょうをモチーフにし、あまり知られていないユウガオの実や夕顔の花をデザインしました。また文字色を濃紺にし、夕顔の花が咲く夜をイメージしています。
当初そのまま食べる事やパイなどの製菓やヨーグルトと一緒に食べる事をイメージしていましたが、最近では食べてみた人のアドバイスからワインやミルクなどの飲み物との相性もよかったり、豚肉のソテーのソースにしてもおいしく食べられ、汎用性の広さが分かってきました。
コロナ禍で地元の良さを再発見する機会が増えました。この機会に地元に古くからある食材のよさを見直してもらうきっかけになればと思います。